入浴拒否 The Lord of the FURO!

BPSD
スポンサーリンク

✔風呂好きの母が約2年入らない。

これがどれほどきつかったか。
母はもともと風呂が大好きで、買い物ついでにスーパー銭湯、腰を痛めたら天然温泉。
家では、祖父母が亡くなって自由に入れるようになってからは1時間コース。
「お母さん大丈夫~?」と声を掛けることもシバシバ。

そんなI・LOVE・FUROの母が、とにかく風呂を嫌がった。
10年前の夏のある日、認知症の診断を受けてからすぐに入浴拒否は始まりました。

1年365日。
夏、徘徊で大汗をかいても。
秋、孫たちに会うからと説得しても。
冬、足湯をしようと桶を購入しても。
春、私が入れようとシャワーキャップ、風呂椅子を買っても。


「なんで入らなきゃならないの?!」
「嫌だって言ってるのに!」
振り払われる手をかわし、なんとか説得して風呂場へ連れてゆき、
体や頭にお湯をかけたら
「イヤー!!なんてことするの!!怖い!!もうやめてー!!」
毎回大絶叫。
今思い出しても、私の心の折れる音が聞こえてきます…
ポキポキ。

それから清拭も失敗。当時の私はその単語すら知らずに、
とにかくタオルで体や頭をきれいにしようとしましたが、これも拒否が半端ない。

時々拭いて、水のいらないシャンプーをする以外はもうどうしようもなく、
臭う母の衣服を洗い、臭いを漂わせて徘徊する彼女を見守りながら歩き、
一緒に喫茶店にも行きました。
私にはどうすることもできなかった。

✔入浴までの道のり 

在宅シングル介護2年目、今から約8年前。
今のケアマネージャーさんや主治医と出会い、
デイサービスも今のところにお世話になり始めました。

ここでようやく入浴への道が開けます。

デイサービスと言えば、お風呂に入れてもらえるのが醍醐味の一つです。
普通のデイでも、もちろん本当に一生懸命やってくださいます。
ただ、拒否が強かった母のような人に向き合って、専門的に対応してくれるのが
「認知症対応型デイサービス」です。
当時の私にはその認識がなく、母は私の希望で運動リハビリデイに通っていました。
「母は歩くことが好きなので、リハビリができるデイで歩行機能を維持したい」
今思えば通うなんて無理だとわかります。
ましてや入浴なんて。
まだ携帯電話をかろうじて使用できていた母は、デイのキャンセルも自由自在。
当日迎えが来ても「行かない」と勝手にキャンセル。
もし行けたとしても風呂は拒否

変わったばかりの今のケアマネージャーさんが、
「お母様は、認知症対応のデイに行かれた方が落ち着くと思いますよ」
と言ってくださっても、私は運動リハビリデイで、とのたまいました。

結局、状況は変わらない=風呂には入っていない。
私はとにかく毎日仕事ばかりしていたので、他の介護も極限を迎えていました。
ケアマネさんが何もわかっていない私を強く説得して下さり、
認知症対応型デイサービスに行くことになりました。
人気のあるデイサービスなのですが、状況を見かねてすぐに受け入れてくださったのだと思います。
感謝しかありません。

今の私は8年前の私に言いたい、あんたバカなの?と
風呂に2年近くも入っていない異常事態なのに、
まだ母がアルツハイマー型認知症と認められていなかった
プロの言うことは素直に聞いた方がいい
その人たちが、自分たちのために心を配ってくれていると感じたなら尚更。

認知症対応デイサービスに切り替えると、なんだかんだと上手に家から連れ出してくれて
車にサッと乗車。入浴拒否は続きましたが、決められた日にきちんと
通えるようになったことが大きな前進。
そして!!
ある日私が帰宅すると、石鹸の香りを漂わせた母が家で寝ているではありませんか!!!

スタッフさん、神ですか?!!
どうやって入れたの???
本当にありがとう…。
さっぱりした穏やかな表情。清潔な体と髪の毛。
私はその場にヘタと座り、しばらく天井を仰ぎました。
そしてデイサービスからの連絡帳を開いて、「入浴」の欄に
チェックが入っているのを何度も何度も見返したことを覚えています。

この後は、週1回、2回と徐々に回数を増やしてくださり、
風呂好きな母の笑顔が戻ってきたのでした。
今でも同じデイサービスに通わせてもらっています。
本当にお世話になりっぱなしです。

✔私がスタッフだったら…

今の職場にも、入浴拒否の強い方がいます。
入る前が大絶叫、でも入ると「ありがとな」と気持ちよさげにしてくれます。
私が当時の母に関わるスタッフならどうするだろう。
いろいろ理由をつけて上手に風呂場に誘導し、
こちらがお願いしたことをしてくれるたびに大きな声でお礼を伝え、
嫌がられても脱衣し、蹴られても洗い場まで連れていくしかないかもしれない。

家族だと、今までのムカついたこととか、悲しい気持ちが強く先だってできない。
入ってしまえば気持ちがいいと思ってくれる確証があっても、誘導で失敗する。
事故が起きてからでは遅い。

な・の・で。

入浴拒否がとにかく強い認知症の人は、
認知症対応型デイサービスに行ってお風呂体験をしてもらうのが
一番ベストだと思います。
家族としては、汚れていて本当に申し訳ないけれど、
介護職としては、さっぱりしてくれればそれが一番嬉しいです。

あと、在宅と一番違うのは、介護現場はチームで対応しているので、
アプローチする人ややり方が複数ある
本人とスタッフの相性が合う合わないも、ある程度対応できる。
どっこい家だとそうはいきません。
ましてやシングル介護なんて、自分しかいないんだから!!
何が正解かなんて、もう深い闇の中ですぜ。
自分で頑張っても頑張ってもできないことは、
プロに力を貸してもらってください

他力本願や無責任にはなりません。
認知症本人が快適でいられるか、を一番に考えていくことが
結局家族も救われる方法だと思います。

タイトルとURLをコピーしました