✔帰りたい、と言われてみた
最近は少なくなりましたが、母も帰宅願望がかなりありました。
「お父ちゃんがいるから帰る」
「お父ちゃん(私には祖父)は死にました」
と言って彼女をひどく悲しませたこと、しばしば。
「今はもう暗くなっちゃったから、もうみんな寝てるよ」
「きっと向こうもご飯を食べているから、後からにしようよ」
付き合いきれず、私が横になって休んでも、
母は玄関先で靴を履いて、一人で開けられなくなってしまった
ドアをカリカリと触っていました。
なんだか悲しい症状の一つです。
✔自分が一番安心できた時代に帰りたい
母の帰りたいところは、
両親(私の祖父母)が元気で強くて、自分を守ってくれていた「時代」です。
女学生のころは、仲良し3人組でいつか東京に行こう、なんて話して。
独身時代は名古屋の街中でバリバリお勤めして。
家に帰れば、家族や近所の人たちと喋って。
夢や希望があふれていた時代。
認知症の帰宅願望は、物理的に家に帰りたいんじゃなくて、
自分が楽しくて安心していた時代に帰りたいのだそうです。
人によっては、会社努めで輝いていた時代。
子育てして子供がかわいくて幸せだった時代。
でもそれは、何も認知症の人だけに現れる気持ちではないと思うんです。
私も、先日お昼にウトウトしてしまった時、
小さい頃過ごした家の縁側で昼寝をしている夢を見ました。
家族みんなが元気で笑って、庭の木々が風に吹かれていた。
懐かしくて温かくて、涙が出て目が覚めました。
帰りたいな、と思ったあと、
「帰れるはずもないのに」
そう自分で言った時、とても悲しくて、
認知症の人はこんな悲しい気持ちになっているのかな、と思いました。
✔女優になるしかない
帰りたい気持ちは、どんなに肯定してもなだめても収まりません。
なだめたとて、その一瞬の納得にしかなりません。
施設でも同じことが起きていて、
うまく見守るのが一番と知りました。
家では難しいかもしれませんが、帰りたいと言われたら
まず「そうだね」と一言でいいから発してみてください。
自分が発したセリフで、自分に勢いがつきます。
もし調子が良ければ、「誰かまっているの?」など、
理由を聞いてみてください。
否定したらひどい状態で続きます。
混乱して興奮して、ひょっとしたら玄関を飛び出していくかもしれない。
ケアマネさんが言っていました。
「私は女優。」
嘘でもなんでも、自分が楽になる。
そうすれは、認知症の人も自然と落ち着きます。
✔安全確保も忘れずに
機嫌が良くても、見守っているときは、
身体の安全を確保してください。
靴は脱げそうではありませんか。
転倒するものは玄関にありませんか。
施錠はしてありますか。
我家は、ホームセンターで補助錠を購入してつけてあります。
また、暖簾やマグネットで玄関のドアを覆っています。
開けられなくなりかけている人には、視覚でだますのは
効果があると思います。
自分で出て行けてしまう人は、カバンに鈴、果てはセンサーマット設置。
認知症の場合、何でもそうですが、まず安全確保。
そうすれば、自分も少し余裕がでます。
✔最後には誰かがわかってくれる
毎日毎日、介護お疲れ様です。
デイサービス通所、施設入居などで、あなたと要介護者が離れた時、
普段あなたがしているケアは、要介護者をみれば一目でわかります。
私も仕事で、施設の入居者さんを日々見ながら、
お家でよく対応されてきたんだな、などと感じます。
逆に利用者としては、母に関わってくれている各所のスタッフさんから、
率直に感想を言ってもらえて、私に同調した対応をしてもらっています。
あなたの介護は、
どこかで必ず、受け止めて引き継いでくれる第三者がいます。
別にそのためにこんな介護なんてつらいことやってられん。
そりゃそうです。
でも、きっとわかってくれる人はいると思うから。
深呼吸して、頑張らないで頑張ろう!