✔葬儀会社や病院で広められている考え方
安心してください。
変な布教活動ではありません。
私は以前葬祭事業の仕事に就いていたのですが、15年ほど前、会社の研修で勉強しました。
その時は「怪しいわ~」なんてみんなで話しながら研修に参加したのですが、
参加後はみんな納得して、勉強できて良かったと話していました。
今では、葬儀会社や末期病棟など多くの現場で、スタッフが知っておきべき知識として広まっています。
✔グリーフ(悲嘆grief)をケア(気づかうcare)する
グリーフケアは、大切な人やペットが亡くなった時の心のケアに用いる考え方です。
ただ、死別だけではなく、転職・病気・引っ越しなど、強い喪失体験も含まれます。
強い喪失体験は、心が大きなショック状態になったり、ぽっかり穴が開いたような虚無感で、
体にも影響がでて、いつものように生活ができなくなる原因となってしまいます。
特に日本人は、人前で泣いたり悲しみを表現したりすることが苦手なので、感情に蓋をしてしまいがち。
その蓋を取って自分の感情をモーニング(表現)できるようにサポートするのが、グリーフケアと言われています。
✔実際現場ではどうしているの?
私がいた葬儀会社では、傾聴し肯定し、一緒にお葬儀を作り上げることで、悲しみの中にいる方に寄り添うようにしていました。
中には怒ったり怒鳴ったりする方も多かったです。特に男性はその傾向にあったように思われます。
葬祭業は、亡くなったことを受け入れられず渦中にいる方がお客様です。
まさにグリーフ真っ只中。ありとあらゆる人間の感情が浮き彫りになる状況です。
グリーフ(悲嘆)という単語を知っているだけで、
この方はいまグリーフ状態だ、と認識しながら客観的に会話ができる。
そうすると、お客様もこちらスタッフも救われていく。
心が救われる効果があることを実感していました。
✔グリーフ状態とその過程とは
グリーフ状態にあると判断するには、あれ?おかしいなと思う目安があるそうです。
当時の私は以下全部に当てはまっていました。
・眠れない。日中は眠くて仕方ない。横になりたい。
・人との会話の内容を覚えていない。
・感情が平坦。もしくはどんどんと溢れて止まらない。
・生きていくのがつらい。
・自分の気持ちなんて他人にはわからないと思う。
参照:一般社団法人グリーフサポート研究所さん
https://www.griefsupport.or.jp/grief
また、過程段階が4つあるそうです。
1:ショック期
2:喪失期
3:閉じこもり期
4:再生期
参照:日本グリーフケア協会さん
https://www.grief-care.org/about.html
あれ?どこかで聞いたような…。
そう!介護する家族の心の受容過程に似ています。
良かったらこのブログにある「家族の心の状態」を参照ください。
https://kaigoyutori.com/psychology/
私はたまたま初任者研修を受ける前からグリーフという言葉を知っていたので、
介護が始まってからの訳のわからない不安や否定の感情に名前がついて、
安心したのを覚えています。
初任者研修を受けた後は、「グリーフ」と「介護する家族の心の受容過程」が
結びついて、介護生活というものは心身にかける負担が非常に大きいのだと
認識が深まり納得しました。
✔介護する人に必要な考え方
身内が病気になるなんて、まさにグリーフ状態まっしぐらです。
アルツハイマー型認知症は、物盗られ・徘徊・風呂拒否・介護拒否・読み書きができなくなる。
もう毎日強い喪失感のオンパレードです。毎日が闘い。
私はこういう心理状態があると知っていたから、自分も母もグリーフだ、と頭の片隅で思えました。
そして、鬱屈して暗い心をどうにか外に出そうともがいて、家族の会に行ったり、
ケアマネさんに話を聞いてもらったりしました。時には母と二人で旅行にもでかけました。
自分たちで自分のケアをする。誰かにもケアしてもらう。
それでも毎日毎日やる気はしないし、感情の起伏が激しいし、苦しかった。
ですが、それは当然経験することで全くおかしいことではない、と「わかっていて」助けられました。
介護なんて毎日喪失なんだから。
それをケアしているあなたはすごいです。
病気になってしまった本人も頑張ってもがいています。
強く悲しく憤ってしまうことは、当たり前。
大丈夫です。
少しずつゆっくりだけど時は過ぎていきます。
心が穏やかになる時が必ずやってきます。
穏やかになった時、
アルツハイマーの人はあなたのことがわからなくなってしまっているかもしれない。
だから、苦しい今を一緒に生きることにもきっと意味がある、と私は思います。