✔クマのぬいぐるみ
最近の母は、クマちゃんのぬいぐるみがお気に入りです。
実は5年前くらいに購入したのですが、
「お姉ちゃんが持ってればいい」と返され(つき返され)ました。
以来、私の部屋にいたクマ。
認知症が進んできた最近、再度渡して抱っこさせてみると、
嬉しそうにしてくれました。
今は「ごはん食べたの?」「かわいいねぇ」と話しかけています。
いや、私にも話してくれ。
私としたことが、ありえない。やきもちでしょうか。
役割を奪われたような複雑な気持ちです。
そして、こうやって私やこの世界の現実から卒業していくのだろうな、
と感じました。
✔西田敏行さんと長瀬智也さんのドラマ
アマプラでドラマ「俺の家の話」が配信されています。
西田敏行さんは、脳梗塞からくる認知症を患う人間国宝。
長瀬智也さんは、家から逃げて戻ってきた長男。
父子の関係性がよく描かれていると思います。
私は介護系の映画やドラマは嫌いですが、
俳優さんたちの演技も宮藤官九郎さんの脚本も良くて、
今の自分と照らし合わせて見ています。
父をグループホームへ入れる場面で久しぶりに泣きました。
✔人生の責任を負ってみた
私は、子供のころから母に反発ばかりしてきました。
母は、とにかく家族につくす人。
私は、とにかく家から離れたい長女。
彼女は、病気になって初めて家族につくさなくなった。
もし認知症がなかったら、今でもバカな私や父のために人生を使ってくれていたと思います。
私は、初めて母の偉大さに気付き、
家や家族をどうしようと悩む「普通の人」となりました。
バカな私は親の苦労がわかるまで半世紀近くかかってしまいました。
介護がなければ、私は何の責任からも逃げたままでした。
✔病気でも「いてくれる」ありがたさ
今は、当たり前に「いてくれる」ことに感謝する毎日です。
「ありがとうね」
「ごめんね」
「わぁ、きれいだねぇ」
「あれ、かわいいねぇ」
人を思いやる素敵な言葉が残っている母が大好きになりました。
そして何より、今でも
「ただいま、疲れた~」と言って帰宅した時、
「ごはん食べたの?」と笑顔でそこにいて聞いてくれる。
自分だってデイでできないことも多くて疲れて悲しいだろうに。
そのやりとりは、当たり前なんかじゃない。
一生懸命、二人で頑張った証の会話です。
親子なんだから、喧嘩もするし、依存的になるときもある。
今日はやりたかねぇ、と寝ているだけの時もある。
そうやって複雑でいびつな形でもいいんだ、とやっと思えます。
仕方ない、明日も頑張るか。