✔実態は辛い現実
昨日のニュースで認知症行方不明者の捜索で、
他県との連携が取れている自治体が少ない実態を知りました。
また、若年性認知症の対象年齢(65歳未満)では
認知症捜索の対象外になる場合もあるそうです。
NHKニュース 12月12日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241212/k10014665731000.html
認知症初期の人は、県をまたいで徘徊することは十分に可能です。
広く探すことはどうしても必要だと考えます。
✔どこにもいない 途方にくれる
私も、母を何度も何度も探して探して辛い経験をしました。
一番初めに母を探したのは10年前。
最初にアルツハイマーと診断されてから数日後に母はどこかへ行ってしまいました。
一晩帰ってこなかった。
結論から言ってしまえば一晩だけかもしれない。
でも、その前の数日間の落ち込んで混乱した様子から、
ただ事ではない、と私は思った。
生きた心地がしなかった。
無理やり免許を取り上げていたので、そう遠くにはいかないはず。
だけど、財布を持ってるから電車に乗るかもしれない。
もうそうなったら探しようがない。
携帯は鳴る。
だから着信をみてくれているはず。
あまりかけるとバッテリーがなくなる。
昨日まで気楽に見ていた景色が全く違って見える。
探す場所は途方もなく広く、行けども行けども。
ただ単に不安な景色しか続かない。
あの大きな看板の下にいるかもしれない。
国道沿いを歩いているかもしれない。
親類全部に電話をかけた。
みんな知らない、連絡はない、と言った。
市民病院に行って搬送されていないか聞いた。
もし来たら連絡して欲しいと病院に頭を下げた。
一日中走り回って足がもつれて、病院の入り口で転んだ。
コンクリートで膝を思いっきり擦りむいた。
地面に突っ伏してしばらく声を出して泣いた。
気を戻すと、見つかるまで泣くもんかと立ち上がった。
警察にももちろん行った。
「家出だとこちらも今の段階では何もできません。
とりあえず預かります。もし見かけたら連絡します。」
これは家出なの?
薄暗い照明、打ちっぱなしの床。
今考えれば違うかもしれないけど、
その時は警察官の言葉が冷たく事務的に心に響いた。
でも、協力して欲しくて何度も食い下がって深々頭を下げて帰った。
万が一のことがあったらどうしよう。
一人で悲しんでいるなら家に帰ってきて欲しい。
こんなに人がいるのに誰も係わってくれない。
誰か母を心配して欲しい。
こうやって思い出して書いていて本当に辛い。
大切な人が見つからない状態が続いている人の気持ちは計り知れません。
✔GPSは必須
翌日、母本人から連絡が入り、近くのビジネスホテルに泊まったとのこと。
今日は帰るから心配いらない、なんで親戚に電話したの?と言われた。
この後からは、一晩見つからないということはなくなりました。
しかし、何度も何度もどこかに行ってしまうことは続きます。
カバンの内ポケットの中に縫いつけた住所の布は剥ぐ。
定期入れに名前を書けば使わなくなる。
財布に住所を書いた紙を入れれば抜き取る。
携帯の操作がおぼつかなくなってきたのをいいことに、
内蔵機能の位置情報検索を設定した。
これでおおまかな位置は把握できた。
携帯を落とさなくてよかった。
GPSは携帯でなくても小型のいいものもある。
でも、母は取り外してしまうから使えなかった。
なんにせよ、GPSは必須です。
✔なぜそこにいる
把握できたと同時に、なんでそんな場所にいるんだ、と憤ることになった。
主に静岡県、愛知県。
どこへでも自由に出て行っている。
名古屋に二人で引っ越してきてから、私は正社員の仕事をしていたから、
おおかた仕事中で動けない。
GPSは21時を過ぎても駅周辺を示すことなどしょっちゅうだった。
携帯の画面を見ながら仕事をし、「頼む家に着いていて」と
祈る気持ちで大急ぎで家に帰った。
✔行政も頼ろう
名古屋市の場合、はいかい高齢者おかえり支援事業というものがあります。
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000038313.html
いなくなってしまった時、登録している人にメールをして、
特徴などを共有します。
発見したら発見メールも届きます。
自分がおかえり支援サポーターとして捜索に協力することもできます。
これは、警察はもちろん、タクシー会社とも連携しているようです。
私がおばあさんを保護した時に、たまたま通りかかったタクシーの運転手さんが
メール見てみるからね、と言っていました。
違っていたらすみません。
名古屋市は高齢者支援が充実しているので、
こういった取り組みはすごくいいと思います。
✔本当に悲しいから 人海戦術
家族を探すということは、
我が家はもちろん、誰にも経験して欲しくありません。
だから私は、近所でも遠くへ行っても、
様子がおかしい人を見かけると、しばらく様子を見るように
しています。
なんなら上手に声をかけます。
家に着くまで見守ります。
認知症の人は、頭が先に出て足をあまり上げない歩き方をする人が多いです。
いきなり声を掛けると怖がります。
まるで目的があるかのように(本人にはある)ずっと歩きます。
冬なのに薄着です。
靴が左右反対のこともあります。
どうか、様子がおかしい、いつも見かけない人が、
特に夕方から夜、一人で歩いていたら、
「もしかして」と思ってください。
どう見てもおかしいけど、自分はつけていけないのなら、
警察に通報して見かけた時の情報を伝えてください。
今は、高齢者が本当に多いので、
警察も情報として受け取ってくれるところが多いと思います。
少なくとも、今私が住んでいる地域の警察官の皆さんは、
すごくよく聞いてくださいます。
母だって、まだ出て行ってしまう可能性はゼロではない。
油断は全くできない。
毎日神経をすり減らして過ごしています。
制度が確立されるのを待っているだけでなく、
どうか世の中に「意識して見てくれる目」が
たくさん増えますように。