✔いつもこうですか?という言葉
ある日、職場の施設でのこと。面会に来た娘さんに
「母が男の人が見えるというのですが、いつもこうですか?
普段おびえたりしていませんか?」と聞かれました。
認知症の人はレビー以外でも割と見えないものと話したり、
見えると言ったりします。
私の母はアルツハイマー型ですが、時々おじいさんや小さい子が見えます。
最初は不安に思いましたが、医師に相談して問題なかったし、
できることが減った分、見えるものが増えたんだな、
と前向きというか、受け止めて生活しています。
時には一緒に「今日は帰ってもらおう」なんて二人で笑っています。
施設でも、医師に相談しながら
職員はその利用者さんの世界に入ってケアしています。
きっと娘さんも、お母さんが認知症になって、
病気のことも勉強されていると思います。
だから、投げかけられた言葉には、きっと込められた思いがあると感じました。
✔不適切対応をされているのでは、という思考回路
私は普段無意識にこの思考回路を張り巡らしています。
今回、その娘さんが発した言葉にも、きっと本人も上手く外に表せないもやっとした気持ち、
「いつも母をないがしろにしているのではないですか?」
というメッセージがあったと思います。
もちろん、施設としては、その方のお母様にも普段安心して過ごしてもらえるよう、
完璧ではありませんが、その人らしくいて欲しいと思って日々対応しています。
フロアの雰囲気も明るいのが自慢です。
今回は、娘さんにはそれは認知症症状からくるもので、
普段から決しておびえた様子はない、
むしろ職員とよく話してくれていることをお伝えしたところ、
帰りには笑顔を見せてくださって安心しました。
でも、私は、施設の一職員であると同時に、
家では利用者の家族です。
施設(他人)を疑う気持ち、すごくよくわかります。
母が、時々いつもと違う表情や、悲しい顔で何か喋っている時、
デイサービスで何かあった?
日中、何か辛いことを言われたのではないか?と思います。
もちろん、そんなことは毎回取り越し苦労で、
ささいな行き違いはあるかもしれないけれど、
単に疲れていたり、お腹がすいていたりということがほとんどです。
デイ利用の私ですらそうなのだから、入居施設に親を預けている家族としては、
日常がまったく見えない分、「ここは本当に大丈夫か」
という気持ちは強いと思います。
私は、いつもお世話になっている感謝の気持ちがどんなにあっても、
疑う気持ちは常に持つようにしています。
そして、それでいいと思っています。
捕捉として認知症初期の場合、本人の虚言がある場合があるので、
そこは見極めが必要になります。
✔いつも見てるよ、それは絶対必要
どんなに有能なスタッフでも、万年満点対応なんてできません。
人間だから、たまたま感情がぶつかってしまうこともあります。
そんな時、施設では他の職員の目がいつも見ています。
どんなにできる職員でも、絶対虐待しないなんてことはないんです。
だから「誰かの眼」としてお互いを見ます。
辛いときはフォローしあいます。
家族と施設も、その関係だと思います。
だから、疑問に思ったことはどんどん伝えていいと思います。
でも、聞くって実際勇気がいることだから、
普段から感謝を伝えたり、なんでもない話を気軽にしたり。
施設に入居しているなら、面会に行ったり、連絡のレスポンスを早くしたり。
そんな感じでコミュニケーションをとっていることが一番いいと思います。
いつも見てるよ、チェックしてるよ、という意思表示になると思います。
✔もし異変に気付いたら
そんなことはあってはいけないのですが、
もしも異変に気付いたら、他の家族や第三者機関(苦情センター)などに相談してください。
第三者機関は契約書に明記されているはずです。
よく、施設自体の苦情受付も明記されていますが、
私は施設以外に相談した方がいいと思っています。
おじいさんを預けていた私の知り合いは、
面会に行くたびに、おじいさんに傷があって、
でも、もう死期が近くて他に行くところがなくて
何も言えなくて悲しかった、という辛い経験をしています。
何かもやっとしたら、そんなはずはないという方向ではなく、
もしかしたらそうかも、という方向にバイアスをかけてください。
性善説でなく、性悪説で考えていいです。
私の知人のように、あからさまな虐待でなくても、
ちょっと不安に思うことは伝えていいです。
そして、意見を伝える場合は、怒らず冷静に伝えてください。
勘違いであったときに、引っ込みをつけなくてはなりません。
自分たちのために、冷静に対応してください。
安心できるケアを日々行っている施設なら、
納得いく説明をしてくれます。
ささいなもやっとを一緒に考えてくれます。
私の今の環境は、そうやって聞いて考えてくれる人が多いから、
普段自分がやってもらっている分、私もそういう人でありたいと思います。
でも、初老にしてまだ駆け出しなんで、
職場で人がいない時、母が不穏な時、ウォーってなってしまいます。
通所しているデイサービスのスタッフみなさん、訪看さん、訪問マッサージの先生、職場の先輩方。
みんなの背中を見て、あとは実践あるのみ。
なんだけど…道のり、長いなあ。
一人前になるころには、私はヨボヨボばぁさんじゃなかろうか。
明日も頑張るか。